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骨粗しょう症の薬にはどんな副作用がある?種類ごとの特徴をわかりやすく解説

2025.12.19

骨粗しょう症の薬について知っておきたいこと

骨粗しょう症の治療では、薬物療法が重要な役割を果たします。 しかし、「薬を飲むと副作用が心配」「どんな薬があるのかわからない」といった不安を抱える方も少なくありません。実際、骨粗しょう症の治療薬にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や副作用が異なります。 当院では、患者さん一人ひとりの骨の状態や生活習慣に合わせて、最適な治療法をご提案しています。薬物療法は食事療法や運動療法と組み合わせることで、より効果的に骨の健康を守ることができます。 この記事では、骨粗しょう症の治療薬の種類と、それぞれの副作用について詳しく解説します。正しい知識を持つことで、治療への不安を解消し、安心して治療に取り組んでいただけるはずです。

骨粗しょう症の薬は大きく3つに分類されます

骨粗しょう症の治療薬は、作用の仕方によって大きく3つに分けられます。 骨の吸収を抑える薬は、骨を壊す細胞の働きを抑制します。骨の形成を促進する薬は、新しい骨を作る力を高めます。そしてカルシウム製剤は、骨の材料となるカルシウムを補給します。 それぞれの薬には特徴があり、患者さんの骨密度や骨折リスク、年齢、生活習慣などを総合的に判断して選択します。

骨の吸収を抑える薬(骨吸収抑制薬)

この種類の薬は、骨を壊す「破骨細胞」の働きを抑えることで、骨がもろくなるのを防ぎます。 ビスホスホネート製剤は、世界中で最も多く使用されている骨粗しょう症治療薬です。内服薬には毎日服用するタイプと週に1回服用するタイプがあり、生活スタイルに合わせて選ぶことができます。注射薬では、年1回の投与で効果が持続する「ゾレドロン酸(リクラスト®)」も使用されています。 抗RANKLモノクローナル抗体(デノスマブ)は、6か月に1回の注射で済む薬です。骨密度を高める効果が高く、特に骨の外壁への効果は他の薬剤にない特徴があります。 選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)は、骨に対しては女性ホルモンと似た働きをする飲み薬です。安全性が高く、乳がんの予防効果も期待できます。

骨の形成を促進する薬(骨形成促進薬)

新しい骨を作る力を高める薬です。 活性型ビタミンD3製剤は、腸からのカルシウム吸収を促進します。食べ物からのカルシウムを効率よく取り込むことで、骨を丈夫にする働きがあります。 副甲状腺ホルモン製剤は、骨を作る細胞を活性化し、新しい骨の形成を促進する注射薬です。骨密度を高める効果が高く、他の薬で効果が不十分な場合に用いられることがあります。ただし、使用期間は24か月までに制限されています。 抗スクレロスチン抗体製剤(ロモソズマブ)は、骨折の危険性が高い骨粗しょう症に使用される新しい薬です。骨を作る力を高めると同時に、骨を壊す力を抑える二つの作用を持っています。  

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ビスホスホネート製剤の副作用と注意点

ビスホスホネート製剤は効果が高い一方で、いくつかの副作用に注意が必要です。 最も一般的な副作用は胃腸症状です。食道に刺激を与えることがあるため、服用後30分は横にならないようにしてください。起きたらすぐにコップ1杯の水で飲み、30分は横になることと食事をとることを避けるという飲み方が決まっています。

長期使用で注意すべき副作用

頻度は高くないものの、3年以上の長期使用で注意するべき副作用があります。 顎骨壊死(がっこつえし)は、あごの骨が部分的に死んでしまい、腐ってしまう病気です。あごの痛みや腫れ、膿が出るなどの症状がみられます。一度起こすと治すのが難しい副作用ですが、口の中をきれいに保つことで予防できます。定期的な歯科の受診がお勧めです。 非定型骨折は、通常とは異なる形で骨折を起こすことです。太ももの骨でみられ、軽い力でも折れてしまう、折れる場所が異なるなどの特徴があります。治るまでに非常に時間がかかる場合や、骨がつかなくなってしまう場合があります。 これらの副作用は、長期間の薬の使用で起こりやすくなります。当院では、骨折のリスクの高さを考慮しながら、3~5年以上継続使用している場合には休薬や変更なども検討します。

腎機能への配慮が必要です

ビスホスホネート製剤は腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している患者さんには使用を慎重に考慮する必要があります。 また、低カルシウム血症の患者さんにも注意が必要です。治療前に血液検査でカルシウム値を確認し、必要に応じてカルシウム製剤を併用します。

抗RANKL抗体(デノスマブ)の特徴と副作用

デノスマブ(プラリア皮下注®)は、6か月に1回の注射で済む便利な薬です。 骨折防止にかなり有効で、骨密度を高める効果が高いことが特徴です。特に骨の外壁(皮質骨)への骨密度増強効果は、他の薬剤にない特徴となっています。 ビスホスホネート製剤で効果が不十分な場合や副作用が出た場合に用いられることがあります。また、腎排泄に頼らないため、腎機能が低下している患者さんにも使用できる利点があります。

デノスマブの副作用

主な副作用として、低カルシウム血症があります。 カルシウムの値が下がる副作用があるため、カルシウム製剤やビタミンD製剤と併用する必要があります。治療中は定期的に血液検査でカルシウム値を確認します。 また、ビスホスホネート製剤と同様に顎骨壊死の副作用が報告されています。侵襲的な歯科処置との関連性が指摘されているため、服用中は歯科医師への相談が重要です。 デノスマブの投与を中止すると、骨密度が急速に低下する可能性があるため、中止する場合は他の骨粗しょう症治療薬への切り替えを検討します。

副甲状腺ホルモン製剤とその副作用

副甲状腺ホルモン製剤は、骨を作る細胞を活性化し、新しい骨の形成を促進する注射薬です。 テリパラチド(フォルテオ皮下注®、テリボン皮下注®)は、骨密度を高める効果が高く、他の薬で効果が不十分な場合に用いられることがあります。 毎日自分で注射する必要がありますが、骨量の増加を認める効果的な薬です。使用期間は24か月までに制限されており、それ以降は他の骨粗しょう症治療薬に切り替えます。

副甲状腺ホルモン製剤の副作用

主な副作用として、高カルシウム血症があります。 血液中のカルシウム量が増える作用があるため、定期的な血液検査でカルシウム値を確認する必要があります。悪心・嘔吐、痙攣、腎障害などが生じる場合があります。 また、注射部位が赤くなったり腫れたりすることがあり、吐き気や頭痛、倦怠感、動悸などの副作用の報告もあります。 長期間の使用では骨の悪性腫瘍を起こすおそれがあるため、2年までしか使用することができません。このため、骨の腫瘍がある方や骨に腫瘍が転移している方、骨の周りに放射線治療を受けたことがある方は使用することができません。

SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)の特徴

SERMは、骨に対しては女性ホルモンと似た働きをする飲み薬です。 閉経後の女性は、エストロゲンの減少により骨密度が低下しやすくなります。SERMは、骨に対してはエストロゲンと似た働きをする一方、乳房や子宮などへの作用は抑えるため、ホルモン補充療法に代わる選択肢として注目されています。 比較的安全に長期間使用することができ、乳がんの予防効果も期待できる薬です。

SERMの副作用

頻度は高くありませんが、深部静脈血栓症という副作用の報告があります。 足の静脈が血の固まりで詰まる副作用で、血栓を起こす可能性があるため、静脈血栓症がある方には禁忌薬となっています。ほぼ座りっぱなしや寝たきりのような方は使用を避けましょう。 また、発汗などの更年期症状を悪化させる危険性があるため、更年期症状が強い方には注意が必要です。 当院では、閉経後の比較的若年女性で、骨折リスクがそれほど高くない方に、長期的な予防を目的として処方することがあります。

活性型ビタミンD3製剤の役割と副作用

活性型ビタミンD3製剤は、腸からのカルシウム吸収を促進する薬です。 食べ物からのカルシウムを効率よく取り込むことで、血液中のカルシウム量が増え、骨を丈夫にする働きがあります。骨でのカルシウムやリンによる強化を促します。 他の骨粗しょう症治療薬と併用されることが多く、比較的安全性が高い薬です。

活性型ビタミンD3製剤の副作用

副作用として、体内のカルシウム量が増えすぎてしまうことがあります。 高カルシウム血症になると、便秘や気持ち悪さ、嘔吐、食欲低下などを起こすことがあります。放置してしまうと腎臓に障害が起こることがあり注意が必要です。 予防として、水分をよくとるようにしましょう。また、定期的な血液検査でカルシウム値を確認することが大切です。 肝障害や黄疸、急性腎障害などが生じる場合もあるため、定期的な検査でモニタリングします。

新しい骨粗しょう症治療薬について

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近年、新しい骨粗しょう症治療薬が次々に登場しています。 抗スクレロスチン抗体製剤(ロモソズマブ)は、骨折の危険性が高い骨粗しょう症に使用される新しい薬です。骨を作る力を高めると同時に、骨を壊す力を抑える二つの作用を持っています。 アバロパラチドは、2023年1月に販売が開始された新しい副甲状腺ホルモン関連製剤です。骨折の危険性の高い骨粗しょう症に適応があり、投与期間は18カ月までとなっています。 これらの新しい薬は、骨密度上昇効果や骨折抑制効果において高い評価を受けており、従来の治療で効果が不十分な場合の選択肢として期待されています。

新薬の副作用と注意点

新しい薬についても、副作用への注意が必要です。 ロモソズマブでは、心血管イベントのリスク増加の可能性が報告されています。心筋梗塞や脳卒中の既往がある方には慎重な投与が必要です。 アバロパラチドは、副甲状腺ホルモン製剤と同様の副作用に注意が必要で、高カルシウム血症や注射部位の反応などが報告されています。 当院では、患者さんの骨折リスクや既往歴、生活習慣などを総合的に判断して、最適な治療薬を選択します。

副作用を防ぐために大切なこと

骨粗しょう症の薬による副作用を防ぐためには、いくつかの重要なポイントがあります。 まず、定期的な歯科受診が大切です。顎骨壊死の予防には、口の中をきれいに保つことが重要です。薬の服用前に歯科を受診し、口の中の衛生状態を改善し、抜歯などの歯科治療を投薬開始の2週間前までに終えることが望ましいとされています。 既に服用している人でも、歯科の受診は重要です。歯磨きなどで口の中を清潔に保ちつつ、虫歯などがあれば、最小限の治療を受けることで、顎骨壊死のリスクを減らすことができます。

定期的な検査とモニタリング

副作用の早期発見のために、定期的な検査が欠かせません。 血液検査では、カルシウム値や肝機能、腎機能などを確認します。骨密度検査は、治療効果を確認するとともに、薬の継続や変更の判断材料となります。 当院では、骨密度80%未満の場合は検査を半年ごとに実施し、80%以上に改善した場合は年1回に頻度を戻して経過観察を行っています。 異常な症状が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。早期発見・早期対応が、重篤な副作用を防ぐ鍵となります。

正しい服用方法を守りましょう

薬の効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるためには、正しい服用方法を守ることが重要です。 ビスホスホネート製剤の内服薬は、起床後すぐにコップ1杯の水で飲み、30分は横にならず、食事も控えてください。この飲み方を守ることで、食道への刺激を最小限に抑えることができます。 注射薬の場合は、決められた間隔を守って投与を受けることが大切です。自己判断で中止すると、骨密度が急速に低下する可能性があります。

まとめ:骨粗しょう症の薬と上手に付き合うために

骨粗しょう症の治療薬には、さまざまな種類があり、それぞれに特徴と副作用があります。 ビスホスホネート製剤は最も広く使用されている薬で、顎骨壊死や非定型骨折などの副作用に注意が必要です。デノスマブは6か月に1回の注射で済む便利な薬ですが、低カルシウム血症に注意が必要です。副甲状腺ホルモン製剤は骨密度を高める効果が高い一方、使用期間に制限があります。 SERMは比較的安全に長期使用できる薬で、活性型ビタミンD3製剤は他の薬と併用されることが多い薬です。新しい薬も登場しており、治療の選択肢は広がっています。 副作用を防ぐためには、定期的な歯科受診、定期的な検査、正しい服用方法を守ることが大切です。 骨粗しょう症は、痛みが出てからでは遅い病気です。骨の健康を守ることは、将来の寝たきりを防ぎ、健康寿命を延ばす大切な習慣です。 当院は、患者さんの骨粗しょう症リスクに一生寄り添う整形外科として、検査・治療・予防のすべてを継続してサポートします。気になる症状がある方、骨粗しょう症の治療について詳しく知りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。 神保町整形外科では、骨密度検査から治療、アフターフォローまで、一貫したサポート体制を整えています。あなたの骨の健康を守るために、私たちと一緒に取り組んでいきましょう。

著者情報

神保町整形外科 院長 板倉 剛

経歴

資格

所属学会

投稿者:神保町整形外科

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