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四十肩はなぜ起こる?原因と発症の仕組みをわかりやすく解説

2025.12.19

四十肩・五十肩とは何か

肩が痛くて腕が上がらない・・・ そんな症状に悩まされていませんか? 40代や50代になると、突然肩に痛みが現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。これがいわゆる「四十肩」や「五十肩」と呼ばれる症状です。 四十肩と五十肩は、実は同じ病態を指しており、40代で発症すれば四十肩、50代で発症すれば五十肩と呼ばれるだけで、医学的な違いはありません。正式には「肩関節周囲炎」という病名で呼ばれています。

四十肩が起こる原因とメカニズム

加齢による組織の変化

四十肩の原因は、実ははっきりと解明されていません。 しかし、加齢に伴う肩関節や筋肉のこわばり、組織の縮小などによって炎症が起こると考えられています。肩関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化し、肩関節の周囲組織に炎症が起きることが主な原因です。 特に肩の関節にある「腱板」という組織が炎症を引き起こし、それが「関節包」に広がることで痛みや動きの制限が生じます。腱板は肩甲骨と上腕骨をつなぐ重要な組織であり、この部分の柔軟性が失われるとスムーズに動かなくなってしまうのです。

炎症が起こりやすい部位

肩関節の周囲には、炎症が起こりやすい部位がいくつか存在します。 上腕二頭筋長頭腱、腱板疎部、肩峰下滑液包、肩甲下滑液包、烏口下滑液包など、複数の組織が炎症の対象となります。これらの部位に炎症が広がると、肩関節の動きをよくする袋である「肩峰下滑液包」や関節を包む袋である「関節包」が癒着し、さらに動きが悪くなる「拘縮」または「凍結肩」と呼ばれる状態になります。

四十肩になりやすい人の特徴

年齢と発症リスク

四十肩は、その名の通り40代以降の方に多く発症します。 中年以降、特に50歳代に多くみられ、その病態は多彩です。「二十肩」「三十肩」という言葉がないことからも分かるように、若い世代では発症しにくい症状です。

生活習慣と発症の関係

以前に野球をはじめとするスポーツで肩を酷使した人、肩に怪我をした人、姿勢の悪い人は発症リスクが高くなります。 また、運動不足や慢性的なストレス、閉経などによるホルモンバランスの変化も、四十肩の発症に影響すると考えられています。デスクワークやスマホの長時間使用により、首や肩に負担がかかり続けることも、発症のリスクを高める要因となります。 糖尿病の既往がある方も、四十肩につながりやすくなると考えられています。

四十肩の症状と進行段階

初期症状のチェックポイント

四十肩には、いくつかの特徴的な症状があります。 腕をあげると肩が痛い、痛くて腕をあげられない・肩を回せない、寝ている時の肩の痛みで目が覚める、起床時の肩の痛み、肩の痛みで反対側の肩を触れない、肩の痛みで背中やへそを触れない、洗髪や洗顔といった動作が辛い、服を着替える動作が辛いといった症状が見られる場合には、四十肩が疑われます。 特に、髪を整えたり、服を着替えることが不自由になることがあります。洗濯物を干す時に肩が上がらない、肩甲骨まわりがずっと重い、肩こりから頭痛がするといった症状も現れます。

炎症期(急性期)の特徴

四十肩は、通常3つの段階を経て進行します。 最初の段階は「炎症期」または「急性期」と呼ばれます。この時期は肩関節周囲炎の発症初期で、炎症が出現した状態です。肩のあたりが重苦しい感じや、肩の関節がピリッと痛むといった鈍痛から始まります。 症状が進むと、肩周りの感覚が鈍くなってきたり、腕に違和感を感じたり、首や肩のあたりに張りを感じるようになります。さらに悪化すると、ズキズキとうずくような痛みがあり、肩を動かす際に痛みを感じ、朝晩に痛みが強くなってきます。 最も辛い時期には、動いても痛いし、何もしなくても痛い状態になります。夜寝る時に痛みがあり寝つけない、痛みで目が覚めるといった「夜間時痛」や「安静時痛」が特徴的です。動作時には強い痛みがあり、さまざまな日常生活動作で支障をきたします。

拘縮期(凍結期)の状態

炎症が落ち着くと、次の段階に移行します。 「拘縮期」または「凍結期」と呼ばれるこの時期は、炎症は落ち着いたものの、痛みで動かせない状態が続いたことにより拘縮が進行する時期です。夜間時痛や安静時痛は軽くなりますが、過度に動かしたときに強いつっぱり感があります。 可動域制限が主な症状となり、あらゆる方向の可動域が制限されます。強い痛みは落ち着いてくることが多く、可動域範囲の限界を超えるような運動を強制されると痛みを生じます。肩がだるい・重いなどと表現される方もおられます。

回復期(解凍期)への移行

最後の段階が「回復期」または「解凍期」です。 痛みや運動制限が次第に回復、改善に向かう時期です。徐々に痛みが改善し、動かせる範囲も広くなり、動かしても痛みが出なくなります。状態により異なりますが、自動運動や他動運動を痛みのない範囲でしっかり行うことで、肩関節の可動域改善が進みます。 一般的には、数週間から半年くらいで治ります。ただし、中には1年以上の期間を要するケースも存在します。

四十肩と肩こりの違い

四十肩と肩こりを混同してしまう方も多いですが、これらは明確に異なる症状です。 肩こりは「筋肉疲労」、四十肩や五十肩は「炎症」の状態です。一般的な肩こりは筋肉の緊張からくる血液循環の悪化が原因で、習慣化した姿勢の悪さや運動不足、ストレスにより筋肉疲労がおこり、張りや痛みを引き起こします。 一方、四十肩は老化などにより、肩関節をとりまく関節包や腱板に炎症が起こることで痛みが生じると言われています。そのため年齢の若い方より、中年以降に発症することが多いのです。 肩こりと四十肩では対処の仕方が異なる場合があります。誤った判断で痛みを悪化させることのないよう、正しい診断のもと、適切な対処をすることがとても大切です。

四十肩の診断方法

四十肩の診断は、問診・視診から始まります。 どのような時にどんな痛みがあるか、いつ頃から痛みがあるかといったことをお尋ねし、実際に無理のない範囲で肩を動かしていただき、動き方と可動域を確認します。圧痛の部位や動きの状態などをみて診断します。 肩関節におこる痛みには、いわゆる五十肩である肩関節の関節包や滑液包の炎症のほかに、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱板炎、肩腱板断裂などがあります。これらは、レントゲン撮影、関節造影検査、MRI、超音波検査などで区別します。 その他の疾患の除外、軟部組織の精査のため、MRI検査が必要になることがあります。炎症の経過についても調べることができます。 神保町整形外科では、必要に応じてレントゲンや超音波検査を行い、症状の背景にある筋肉・関節・神経の状態を把握します。痛みの原因を丁寧に評価することで、最適な治療方針を立てることができます。

四十肩の治療とケア

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保存療法の基本

四十肩の治療では、薬物療法とリハビリテーションが中心となります。 痛みが強い急性期には、三角巾やアームスリングなどで安静を計り、消炎鎮痛剤の内服、注射などが有効です。内服治療を基本とし、痛みが強い場合に関節内注射を取り入れます。ステロイドや麻酔薬を肩関節内に注射したり、ヒアルロン酸を使用することもあります。 神保町整形外科では、飲み薬、湿布、ブロック注射、物理療法(電気・温熱・超音波)、理学療法士による運動療法を症状に応じて組み合わせ、無理のない治療を行います。

リハビリテーションの重要性

急性期を過ぎたら、温熱療法や運動療法などのリハビリを行います。 四十肩の治療法としては、「運動療法」をメインにしたリハビリを行います。ストレッチや振り子運動は肩関節の緊張をほぐし、痛みの緩和と関節の可動域を広げることを目的とします。 患部の血行を良くすることで、治癒を促し痛みの緩和が期待できます。一般に医療機関で行う温熱療法は、ホットパックやマイクロ波といった機器を使った治療がありますが、自宅では入浴や蒸しタオル、温湿布などを使い温める方法があります。 神保町整形外科では、理学療法士による運動療法やストレッチで、再発しにくい「動ける肩」を作っていきます。生活動作・姿勢・座り方・生活の癖を一緒に見直し、痛みを繰り返さないようサポートします。

日常生活での注意点

四十肩を悪化させないためには、状態に合ったケアが必要です。 自然に治ることもありますが、放置すると日常生活が不自由になるばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。無理に動かすことで炎症が蔓延し痛みが引かない場合や、痛みが強く動かせない場合などさまざまです。 四十肩は、どちらか一方に発症することが多いので、痛みのない側の予防策としても日々取り入れていくことが望ましいです。

まとめ

四十肩は、加齢に伴う肩関節周囲の組織の変化により起こる症状です。 原因ははっきりと解明されていませんが、腱板や関節包などの組織に炎症が起こり、最終的には癒着して動きが制限される状態になります。40代以降の方に多く発症し、運動不足やストレス、ホルモンバランスの変化なども影響すると考えられています。 症状は炎症期、拘縮期、回復期という3つの段階を経て進行し、適切な治療とリハビリテーションにより改善が期待できます。肩こりとは異なる病態であるため、正しい診断のもと適切な治療を受けることが大切です。 神保町整形外科では、首・肩・腰の痛みに特化した治療を提供しています。痛みの原因を丁寧に評価し、レントゲンや超音波検査を必要に応じて実施し、症状に合わせた最適な治療を組み合わせて行います。 肩の痛みでお悩みの方は、症状を年齢のせいとあきらめず、お気軽にご相談ください。神保町整形外科は、痛みを少しでも軽くし、また動ける日常を取り戻すことを全力でサポートいたします。

著者情報

神保町整形外科 院長 板倉 剛

経歴

資格

所属学会

投稿者:神保町整形外科

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